薬局開業・経営への道3【リスク編】
第三回~起業の心構え
みなさんこんにちは。
それでは三回目になる今回は、起業の際の心構えについてお話していきます。
起業するということは大なり小なりリスクを伴うことになります。これから起業する薬剤師の皆さんには、決して失敗してほしくはないので、その心構えや、決してやってはいけないことについてお伝えしたいと思います。
目次
薬局開業に際して決してしてはいけないこと・リスク編
◆友人との共同経営
弊社に登録されている、独立希望の薬剤師様の中には時々
「友人と共同経営をするつもりです。どうすれば事業が成功しますか?」
という質問をくれる方がいらっしゃいます。
私の答えは………
決して友人と共同経営などしてはいけない!です。
共同経営というと、一見聞こえは良いです。事務員を育てるのもゆっくりで済みますし、雇われの従業員とは熱意が違います。残業代も発生しませんし、閉店が遅くなっても文句は言いません。しかしながら、資本金を50%ずつ出し合うということは、何を決めるにもいちいち相手の許可を必要とします。
- 医薬品卸への発注の寵愛
- レセコンメーカーの選出
- 雇う従業員の選定並びに、その雇用契約内容
- その他取引先の選定
- 経営方針の決定などなど…….
取引先からしてみれば、いちいち話し合って決定が遅いというデメリットしかありません。
また共同経営は最初は楽ですが、どんなに儲かっても利益は折半なので、リスクに見合う対価が見込めません。起業の際に無担保・無保証で融資を受けても(第一回参照)リスクが0になるわけではありません。私が知っている限り、薬剤師同士の共同経営をしている方は必ず失敗するか、法人は存続しているが、その給与は雇われ時代以下という方ばかりです。
失敗するパターンとしては、どんなに頑張って患者様が増えても、給与が折半なので段々頑張るのが馬鹿らしくなってくる方が多いようです。そのうちに離別や事業廃止といった流れになります。
リスクは決して悪いことではない!
✔️ハイリスクの先にしかハイリターンはない
✔️ローリスクを取ればローリタンしか待っていない。
これを頭の隅に入れておいてください。
最初は棚番の作成、医療事務員の教育、二次元バーコードのマスタ登録、医薬品卸との契約・価格交渉、保健所・厚生局・その他公費の申請、備品の手配、アスクルの口座開設、シンリョウとの契約、NTT、プロバイダー会社、白衣・マット・ウォーターサーバー会社との契約etc……
やることは沢山あります。最初の一か月は、営業時間中に薬歴を書けないので、毎日終電になります。
確かにこの時共同経営者がいれば楽ですよね。しかし楽を選んでは行けません!
その先に待っているものは、給与や退職金、取引先、引退時期などを自由に決められるオーナライフが待っています。起業1年目は9割の会社が赤字です。失敗や苦労を恐れずに、100%自己責任でやりましょう!いちいち相手の了承を必要としていたら、お互いに養える家族も養えません。果ては大切な友情が壊れる原因ともなります。
日本では10年続く法人は3%と言われています。
外食産業に限って言えば、7割の法人が3年以内に廃業しています。
年間2000件の新しいラーメン屋が出来て、2000件のラーメン屋が潰れています(流行り廃りが激しい)
それに比べて調剤薬局業界はどうでしょうか?
10年続いている薬局なんてザラにありますよね?
それだけ恵まれている業界ということです。ですから最初から失敗するとわかっている選択をしてはいけません。
もし、どうしても共同経営をしたいのであれば、それぞれが直営店を軌道に乗せてから、気持ちも・金銭も余裕を持ってすることをオススメします。これは複数の成功例があります。
◆旅行やちょっとした風邪で店を休む・遅刻する
雇われ時代はちょっとしたことで有給を使っても、多店舗からヘルプの薬剤師が来てくれますよね?しかしオーナー薬剤師はそれではいけません。営業日・時間が守られてなければ、患者様からの信頼が無くなり、他の薬局へ移られてしまいます。一度信頼を失った患者様は二度と戻ってきてはくれません。また同様の理由で遅刻も厳禁です!良く遅れる路線で電車通勤となった場合、開局時間の1時間前にはお店に着いているくらいで丁度よいのです。
体調を崩さないように、早寝早起きを徹底すること。睡眠不足は免疫力が低下し、感染症を起こしやすくなります。(翌日が営業日なのに深酒などはもってのほか!)
患者様お一人お一人の信頼を失う分には、すぐにお店が潰れるわけではありません。しかし、門前ドクターの信頼を失い院内処方になってしまったら、どうでしょうか?即廃業ですよね? 開業医の先生は上記を徹底されています。院長は会社の社長でもあります。
◆信頼できない薬局にはパートナーでいて欲しくない
とすべての先生が考えていると思ってください。
上記を徹底したうえで、お店のシャッターの前で過労死している分には、きっと先生方も許してくれるはずです(笑)
それくらいの心構えがあると、経営者として成功する確率も高くなります。
医薬品卸との付き合い方
ご存じの方も多いかと思いますが、医薬品卸には支払いサイトというものがあります。
サイトが90日の場合、6月に発注した分は、月末で締めて9月末に引き落としとなります。
レセプトの入金は二か月後の20日前後(6月分は8月20日ごろ)になります。繁忙期のレセプトが入金され、内部留保=会社の預金額が増えても、その翌月末に繁忙期の発注分の支払いが待っていることを忘れてはいけません!一時的に内部留保が増え、浮かれて経費を使いすぎたりすると、内部留保が卸の引き落とし額に足りず、引き落としエラーが出てしまうことになります。
スズケン・アルフレッサ・メディセオ・東邦薬品などの広域卸は、経常利益が売り上げの0.1%程度しかありません。100万円の売掛金のある薬局が潰れれば、その分を取り戻すのに、10億円売上を必要とする計算です。なのでジェネリック卸と比べ、広域卸はことさらに引き落としエラーには敏感です。
・1回目の引き落としエラーで要注意リスト入り
・2回目の引き落としエラーで即取引中止(もしくは値引き交渉不可の現金取引のみに変更)
そしてもし、医薬品の卸の買掛金(支払い予定金)を踏み倒して倒産した場合、ご自身だけでなくその子孫に至るまで、二度とその卸は取引してくれなくなります!
大切なのは自身の給与を高くとることよりも、内部留保だということがお分かりいただけるかと思います。これは相手の立場で考えれば当然のことです。
高額な医薬品代の請求を三ヶ月も待ってあげているのに、それを踏み倒されたらたまったものではありません。信用もへったくれもありません。
よって、顧問税理士・会計士とご相談の上、余裕を持った給与設定をすることをオススメいたします。またエクセルなどで、あらかじめ卸の支払い予定額の一覧表を作っておくと、より安心材料になります。
以上。
今回もつたないお話ではありましたが、ご精読ありがとうございました。
次回はビジネスパートナーの作り方・選び方についてお話ししたいと思います。
~第四回につづく~