薬局開業・独立への道58【対決!モンスター患者その①】

こんにちは。
さて、モンスター患者(クレーマー患者)との対峙録をご紹介いたします。
薬局で勤務されている皆様なら、一度くらいは経験されたこともあるかと思います。

モンスター患者の暴力や暴言、異常行動によって、頭を悩ませている方、これから薬局経営を目指されている薬剤師様には是非お読み頂ければ幸いです。

※今回ご紹介するのは取引先のチェーン薬局様で起きた話です。薬局や個人様の特定しないよう、一部内容を修正してあります。

モンスター患者(クレーマー)が薬局襲来!

とある冬の日。

薬局に常連の父子がインフルエンザの処方箋をもって来局されました。

ー処方薬ー

Rp1)イナビル
Rp2)カロナール錠

デモ機を使って、イナビルの吸引の練習をし、お子さんがきちんと吸えるのを確認してから「薬局で吸っていきますか?」と聞いたところ父親がそうしたいと申し出ました。

皆様もイナビルが処方の際、薬局でその場で吸っていただく機会も多いかと思います。
ところが、いざイナビルを吸う際にお子さんが咳こんでしまい、粉末が少し空気中にでてしまいました。

父親から「正しい量が吸えなかったので外に出てしまったイナビルの粉末を目視で計算し、足りなかった分だけ再度門前Drに処方する様、電話して欲しい」
と薬剤師に申し出がありました。

そこで門前クリニックに電話したところ、「再処方は出来るが自費になる」と回答がありました。

その旨を伝えた瞬間に父親が豹変します。

「お前らが咳きこんで正しく吸えなかったときは自費になると言わないから悪いんだ!」
「それを先に教えてくれていたら、咳が出ないタイミングを見て家で吸わせたのに!」

薬剤師の胸ぐらをつかみ責任を取れ!と怒声を発します。

困り果てた薬剤師は社長にまずは連絡。

社長は薬局での経緯を確認し、門前Drにも連絡をします。

Drからは

「え?!あの父親そういう事言うの?もう受診しないで欲しいな‥」
「社長さんには悪いけど保険診療の決まりだから、自費以外で再処方は出来ないよ。話し合いが終わったら教えて欲しい。」

という回答がありました。

誠意を見せるまで毎日薬局に来るぞ!と凄む父親。
本日は解決できないため、後日お宅に伺いますと社長は言い伝えます。
逃げも隠れもしません、真摯に話し合いをしましょうと名刺を渡し、お帰り頂くことになりました。

後日、今回の件を弁護士に相談。
同席してもらうと経費等もかさむ為、社長単独でご自宅に話し合いに出かけました。

ー話し合い当日ー

社長:「本日はお話し合いの場を設けて頂きありがとうございます。」

父親:「菓子折りも持たずに来て謝る気がないのかお前!」

社長:「確かにうちの従業員にも非があります。万が一、咳込んで正しい量を吸えなかった場合、再処方は自費になるとご説明をしておりませんでしたので。」

「勿論、弊社としては円満に解決を望んでおります。そこでお父様の言う、誠意とのはどのような形を望まれますか?」

父親:「金に決まってんだろ。100万くらい当然だろ?」

社長:「分かりました。それではお父様の希望される100万円をお支払いいたします。」

「但し、お父様の暴力でうちの従業員は皆怯えてしまい、薬剤師・事務員もお父様が薬局のすぐ裏に住んでいるのが怖いので退職するといっております。その損害は全額、お父様に請求いたしますがそれでよろしいですか?お子さんに健康被害がなく、根拠のない金銭を要求されるのでしたら、当然警察にも被害届を出します。お父様が弊社の従業員に暴力・暴言を振るっているのは防犯カメラに写っておりますし、音声も残っております。」

父親:「いやいや‥ちょっと待ってください。何でそうなるんですか?」

社長:「根拠のない金銭の要求、従業員を脅して辞めさせられたとなってはもう薬局・患者様の関係ではありません。ただの恐喝になります。お父様にはいつもご利用していただいており残念ですが。」

父親:「いやあ。私もちょっと息子の事なので感情的になってしましました。あまりそういう事を荒立てるようなことは…」

社長:「ではこうしませんか?息子さんには健康被害はありませんでした。なので弊社は金銭をお支払いする義務はありません。」

「すぐ裏にお住まいなのに、気まずくなるのもあれなので、これを機に従業員とも仲良くしていただいて。逆にマナーの悪い患者様や暴言を吐く患者様がいたら、お父様が注意する等、うちの薬局を守ってもらえませんか?そうしたらうちの従業員も心強いですので。」

「うちも従業員にはイナビルが処方された患者様には必ず、咳き込んで全て据えなくても再処方は自費になると伝達します。お父様の様にご不快な思いをされる方がいないよう教育を徹底いたします」

父親:「そうですね。私も訴えられても困るし、すぐ裏のお宅を利用できなくなるのも困るので。感情的になってしまい、すみませんでした。」

—後日談—

この父親は自称ミュージシャンで収入はなく、いつも家の近所をウロウロしているとのこと。
また、まともな社会人に強いコンプレックスを抱いており、ついお子さんの事をダシに金を儲けようと社長さんに打ち明けたそうです。

今回のポイント☝️

  1. 被害の証明できない金額を一方的に要求されても支払いの義務はない。
  2. 何等根拠のない金銭の要求は恐喝である。
  3. 薬局に被害しかもたらさない方は患者様として扱う必要はない。
  4. 経営を揺るがすようなモンスターに薬事法の「処方箋は基本的に応需を断ってはいけない」は適用されない。

この父親の強いコンプレックスを理解し、自尊心を大切にされた社長のお見事としか言いようのない解決劇でした。
既に薬局を経営されている方は大体ご自身で解決の仕方はご存じかと思います。

これから開業を目指される薬剤師様には何かのご参考に。

ご拝読ありがとうございました。